充電器検索やブログによる情報提供などEVユーザー向けのサービスを展開するEVsmart。サービスを手掛けるアユダンテ株式会社代表の安川洋さんにお話を伺いました。
アユダンテ株式会社代表取締役
日本アイ・ビー・エム、マイクロソフトを経てイージャパンを起業、CTOに就く。2006年、技術者とコンサルタントが共に在籍し、高い水準のコンサルティングを提供したいという思いのもと、アユダンテ株式会社創業。プログラミングは中学時代から。テスラモデルX のオーナーでもある。
目次
無料で使えるEVユーザーのためのサービスEVsmart
EVsmartのサービス概要についてお伺いしてもよろしいでしょうか?
EVsmartは、いくつかのサービスの集合体になってます。アプリとしては充電スタンド情報がメインになっていて、EVユーザーの方になるべく高頻度に使っていただくことを目的としていいます。
今後については充電スタンドだけでなく、その他様々な情報を上手く提供していくのが理想です。
EVsmartはナビゲーションと呼ばれるジャンルにカテゴライズされます。ポピュラーなのはNAVITIMEさんやGoogleMapですよね。その中でEVユーザーは多分ですが、圧倒的にニーズが違うんですね。ユーザーを理解している立場から、必要な情報を届けていきたいと思っています。
EVユーザーのニーズはどのようなものがあるのでしょうか?
例えば充電器の情報にしても、地下駐車場に設置されている充電器の場合に何番区画にあるのか掲載されています。他にもビルタイプの駐車場で入り口によっては、違う駐車場に案内されてしまうことがあるんですね。内部で行ったり来たりが出来ず充電器が片側にしか設置されていない駐車場は、入口が制約されます。他にも第2駐車場に充電器が設置されていたり(笑)
こういう事例は調べていくと、結構出てくるんですよ。
一般的なナビゲーションサービスでは分からない情報ですね。EVsmartは無料で使えるんでしょうか?
アプリは有料にするつもりはなく無料で使えます。今のところは、広告モデルで運営していく方針です。ウェブサイトはいくつか機能が分かれます。
充電スタンドの検索はもちろん出来ますが、他にもカタログのようなEV一覧、ブログ、ユーザー同士のコミュニケーションが楽しめます。
電気自動車の比較情報も掲載されているんですね。
カタログの役割を果たす機能が必要だなと思いました。これはEVの車両や性能自体が大きく違う特性があります。
例えば、比較が難しいというか似ている車種も多かったりするんですよね。
値段の違いもありますが、比較出来ないとユーザーが困るだろう、と。充電時間や電池容量を正確に表記されないケースもあるので、なおさら評価が難しくなってしまっています。
もう一つはブログと言われる機能でニュースをメインにしています。EVの情報はレスポンスさんが非常に速報性が高いですよね。
我々が始めた当時はレスポンスさんも含めてEVに関するニュースはほぼゼロだったわけです。ですからブログ機能を立ち上げましたが、数年経って様々なメディアでニュースも取り上げられるようになってきました。ただいくつか情報サイトを見ていると事実と異なる記事が多く出ている印象もあるので、EVsmartブログでは正確に事実に基づく記事を出していけたらと思います。
最後はフォーラムで、ユーザー同士のコミュニケーションが出来る掲示板機能があり、工夫を重ねている状況です。
体験してこそ分かるEVの魅力
安川さんご自身もEVユーザーだと伺いました。EV車の魅力をぜひ聞ければと思います。
言葉で伝えても説得力がない気がするんですよね。
今までの経験では、言葉での説得に乗った人はあまりいませんでした。僕自身は理論的なことが好きなタイプですし、ある程度EVの優位性や性能を知ってたつもりでした。ただ、やっぱり実際に乗ってみることで理解出来た部分も多くあります。
乗ってみないとEVの良さは分かりにくいのでしょうか?
EVは頭で理解するものじゃないのかもしれません。
イメージでは売れない商材なので、日本人にとって不向きな可能性もありますよね。多くの人は電気がなくなる「電欠」「冬が寒い」「遅い」イメージを持たれていると思います。
もちろんいくつかは当たっている部分もありますが、イメージと違う部分も当然あります。
僕はちなみに今までガソリン車30万キロも電気自動車も15万キロ乗っています。ガス欠は過去2回経験がありますが、電欠は1度もありません。
電欠に関して気を付けていることはありますか?
電欠でよく聞くのは「多分大丈夫だろう」と思って走り続けるケースです。
画面上で残り20キロとカウントダウンされている状態で、25キロ先の到着地まで走ろうとするのは無茶ですよね(笑)
僕は7%ルールを決めています。充電が7%になったら1回止まる。これどこでもいいから1回止まって考える。走ったままだと事故の原因にもなりますし、考えられません。充電スポットだって沢山あるんです。全国に夜中やってるスタンドの数って、ガソリンスタンドより電気スタンドが多いんですよ。
意外ですね。知りませんでした
電気自動車の方が安全なんです。充電は30分から1時間待ったりするかもしれないけど、電気があると暖房も使えますし死にはしないわけですよ。照明もスマホの充電も可能ですし、安心感があるんです。
日本市場においてEVの立ち位置ははどのように捉えてらっしゃいますか?
まず日本メーカーが大事だと思います。日本人は日本の製品を重要に感じているので、韓国製、米国製、ヨーロッパ製が来ても一気に売れるかは分かりません。
ただアメリカ、ヨーロッパ、中国は確実にEVにシフトしています。米中欧、これから韓国も含めて日本市場に再参入します。僕が聞いてる話ではあればヒュンダイ、今はヒョンデですけど、来年再参入します。ヒョンデはドイツでカー・オブ・ザ・イヤーで部門別1位になったアイオニックを販売しています。
日本車でカー・オブ・ザ・イヤーを取っている車は少ないのが現状です。優れたEVを韓国、中国が日本市場に持ち込んでくることがこれから発生してくるわけです。電気自動車の場合一番重要なのは、生産能力なんです。工場を1ヶ所作るのに数千億掛かると思いますので、10ヶ所作ったら数兆円掛かります。
テスラは地面にスコップを入れてから車を吐き出すまでに1年掛かりません。
基礎を作り、電気を入れて、柱を立てて、工場を作る。そこからロボットを搬入し、ラインを作り人をトレーニングして、商品をまとめるまで1年掛かっていないんです。
恐ろしいスピードですね。
少なくともハイエンドに関しては、テスラの優位性はおそらく揺るがないと思います。数年間は差をつけられ続けるんじゃないでしょうか。
日本メーカーにとって怖いのは電気自動車へのシフトがいつ起こるかなんです。欧米では2024年までにひっくり返ると言われています。遅くとも2025年と考えれば実質4年しかないですよね。
テスラが仮に5年リードしてるとすると、最後の1,2年既存メーカーは売る車がなくなる可能性すらありますよね。ユーザーは「電気自動車待ってるからいい」となり得ます。その年に売り上げがないわけですよね。
そこまで変化が急激だと思わなかったです。
ノルウェーはテスラがない時代から、9年でひっくり返りました。変化は急激に起こると思います。
欧州全体のプラグイン車両の新車販売台数シェアは8月以降4カ月連続で20%を超えており、国別ではノルウェーで90%、スウェーデンでも50%に達しています。欧州委員会は2030年までにICE車を実質禁止することをアナウンスしており、各国でEVへのシフトが加速しています。
引用:https://blog.evsmart.net/ev-news/electric-vehicle-sales-in-europe/
EVsmatが目指す今後のサービス展開
EVsmartさんの今後の展開についても伺ってもよろしいでしょうか?
何がこれから必要とされるのか分からない部分もありますが、様々なチャレンジはしたいですよね。例えば旅行中の不安は解決したいと思っています。
旅行中の不安だとどんなものがあるのでしょうか?
テスラに関してはありませんが、充電する時にトイレがない不安があります。充電で15分以上その場にいるとなったら必要になりますよね。他にも食べ物や飲み物も買えるサービスだったり。みんなが欲しいものは頭の中にあるんですけど、正面切って絶対に突破出来るサービスは模索中の段階です。
具体的なアイディアとしてはどんなものがありますか?
例えばメディアですと、メディアが言っていいることが正しいかどうかなんて誰も検証出来ないですよね。だから、ユーザーに参加してもらう仕組みを作れたらと思っています。我々がやる以上は責任を持って管理、編集していく必要がありますが、だからといって意見を選り好みせず、両論併記で載せていくのが理想です。
加えて第3の立場に入ってもらう。つまり「メディア」「ユーザー」もう一つは「メーカー」です。最近ではこのような事例も少しずつ出ています。
かなりユニークな試みですね
当然事実は重要ですが、事実だけを伝えても駄目なんじゃないかと思います。事実を捉えるにしても、現代はあまりに複雑過ぎます。
見方によって同じ事実でも印象は全く異なりますし、経緯とセットで伝えた上で見方の方向性を付ける必要があるんじゃないでしょうか。
なるべくバランスの取れた見方を提供したいですよね。ただ、流すだけの情報ではなく違う形のメディアを見据えたいとは思います。
まだ何か明確に言えませんが、一つの解がユーザー参加であり当事者参加の形ですよね。
実際に少しずつ起こっていることですし、ポジティブな反応にもなっています。
やっぱり僕たちもナンバーワンでありたいと思っています。まだまだ目標の50%にも辿り着いていません。ナンバーワンとしてやるべきことをやり、より多くの方に使ってもらえるサービスを目指します。
アユダンテ株式会社ホームページ
https://ayudante.jp/