自給自足の生活で得たのは、何があってもやり直せる自信。「志我の里」 池田さんの暮らし。

滋賀県高島市で体験型の民泊施設「志我の里」を運営する池田卓矢さん。29歳までは大阪で飲食や営業の仕事をしていましたが、とある出会いをきっかけに移住。現在では家を自ら建て、自給自足の生活を営んでいます。池田さんに現在の生活を経ての気づきを伺いました。
池田 卓矢さん
志我の里 里頭
29歳の頃、自給自足の生活をされている方との出会いをきっかけに「電気・ガス・水道がなくても生きてゆける暮らしづくり」をしようと決意。

40年間手付かずだった祖父の土地で開拓開墾から始め、ノウハウのない家づくりにチャレンジ。薪ボイラー、太陽熱温水器、雨水タンク、木製サッシ、ロケットストーブや、歴史ある北欧の薪ストーブを設置し、今の暮らしに。2017年に大きな古民家を移築してセルフビルドで建て、農家民宿とレンタルスペースをオープンしている。

自給自足の生活で大事なのは仲間づくり。

施設内の様子

自給自足の暮らしに至るきっかけを伺ってもよろしいですか?

当時付き合っていた彼女が、自給自足の生活をしているご夫婦のところへウーフ(WWOOF)をしに行きました。
ウーフは農場など無給で働く代わりに、宿泊場所や食事の提供をしてもらう仕組みです。
僕自身も自然志向な部分があって興味があり、一緒に行かせてもらったんです。

そこで、メッセージを受け取った感覚でした。
僕は当時飲食の仕事をしていましたが、食について何も知らなかったんですよね。いい食べ物を食べれば、薬のように体を治したりも出来ますし、旬の食べ物で自分の体をコントロールも出来ます。長野県でのご夫婦との出会いで、自然による食事の重要性に気づかせてもらいました。

しかも、これからいつ災害が起きるか誰にも分からないですよね。
電気やガス、水道が止まっても自分で生きていけるような暮らしを作っていくのが大切だな、とメッセージをもらった感覚がありました。そこで、自分でも自給自足の生活にチャレンジしてみたいなと思ったんです。

移住する先はどうやって見つけたんですか?

40年以上使っていなかった祖父の土地がありました。
知り合いは1人もいませんでしたが、そこで何か出来たらいいなって思ったのがきっかけです。
その時は移住や家を作る感覚はなかったんです。まずは2~3日ぐらい泊まれる小屋作りから始まりました。まずは小屋を建てて、その後に畑や田んぼを始めていったんです。

自給自足の生活で、押さえておくべきポイントはなんでしょうか?

一番大事なのは仲間作りですかね。
やっぱり自分だけで出来ることは限られます。成功体験を持っている先輩達との繋がりがあると、困っている時に教えてもらえたり手伝ってもらえたりします。僕の場合はたまたま最初の方で、繋がりを持てたのが大きかったですね。
もし自分1人だったら、それこそお金を払ってどこかの会社さんにお願いしていたと思います。
未経験の自分が、こうした生活を出来るのは周囲の方に助けられているからですかね。

仲間作りに必要なことはなんでしょうか?

自分自身が楽しそうにしているのが大事だと思います。
自分がワクワクしながら、出来るイメージを持って「手伝ってくれませんか?」と言うと結構手伝ってもらえたりするんですよ。

自給自足の暮らしで得たものはなんでしょうか?

自分の知識や経験が増えて「最悪何とかなる」と思えたのが大きいですかね。
家にしろ、畑にしろ、田んぼにしろ自分でどうにかする自信が身に着きました。
もし、万が一出来ないことがあっても、大体のことが出来る仲間がいるんですよ。
誰かが助けてくれる安心感の中で暮らしていけるのは豊かさの1つだと思っています。

もし災害が起きて、今まで作ってきた家が全部潰れてしまったとしても、どこでもまた作ればいいと思えるんです。「何かあってもまたやり直せる」と自然と思える考えになれたのは、凄く良かったです。

ソーラーカーポートに興味を持ったきっかけ

施設前に設置されたソーラーカーポート

池田さんはソーラーカーポートも設置されていますが、興味を持ったきっかけを伺ってもよろしいですか?

屋根の上に太陽光パネルを載せるのは、屋根が痛む可能性、費用、処分方法など消極的だったんですよね。加えてカーポートが欲しかったタイミングでもありました。
もし、カーポートの上に設置出来るとしたら、今まで考えていたことが全部クリアになると思ったんです。

実際に付けてみた感想を聞いてもいいですか?

まず自慢出来るのはいいですよね(笑)
志我の里に泊まりに来たお客さんにもソーラーカーポートについては説明する時もあります。「カーポートの上には太陽光パネルがあって、これで電気が止まっても大丈夫なんです」って言えるんです。
設置しているのが、4台用のソーラーカーポートなのでインパクトがあって自分でやりましたと伝えると驚いてもくれます。

エコに繋がる暮らしは機能的だし、楽しい。

オンラインでインタビューに応じる池田さん

池田さんとして今の暮らしを経て、伝えたいことはありますか?

僕が大阪に住んでいた時は、稼ぎたいだけで環境に一切興味がなかったんですよ。

でもこっちに来て琵琶湖があり山も目の前にあると、環境のことに少しずつ興味を持ち始めたんです。まずは、自分の出来る範囲から始めて行きたいと思ったんです。しかも、エコに繋がる暮らしは自分の楽しみでもあります。

自然エネルギーと言ったら硬い言葉に聞こえますが、薪だって単純にいいものなんですよ。
電気でお湯を沸かすとすぐに冷めてしまいますが、火で沸かすとなかなか冷めないんです。
お風呂も同じで入った後に、湯冷めがしませんし、疲れの取れ具合も違います。

実家のオール電化のお風呂だと、入った後に服を来ている時から身体が冷え始めます。
この自然に囲まれた暮らしの体験を自分だけしてしまっているのはもったいないと感じて、伝えていけたらと思っています。僕は自分が経験してみていいと思ったものしか勧めないんですよ。
だから、ソーラーカーポートもとりあえず自分の家で使ってみていいと思ったので伝えています。

環境問題にも以前より興味が湧くようになったとおっしゃってましたが、理由を伺ってもよろしいですか?

自分が自然に囲まれて暮らしている環境は大きいですよね。
自分の生活の延長線上に環境の問題があることをダイレクトに感じます。
例えば、山が荒れ始めると、動物も食べ物がなくなってしまいます。すると、動物たちが山から降りてきて畑を荒らしてしまうんです。それは自分が、畑をやっているから実感として分かることなんです。
やっぱり環境に良くないことって、どうしても巡っていってしまうんです。

今の暮らしを経て内面の変化ってどんなものがありますか。

元々大阪にいる頃は、好きなことを仕事にしたいと思っていました。今は志我の里や薪ストーブに関する仕事をしていて、使命だと思ってるんです。自分が環境にいいと思ったことをまずは体験してみて、それを伝えることが自分の中では使命なのかもしれません。

最初薪ストーブの事業は宣伝を一切しなかったんですが、どんどん上手く行きました。
口コミやSNSだけで、自分の生活は十分やっていけるなと思ってたんです。
ただ、知り合いが「別の会社に高いお金払って薪ストーブつけてもらってたけど、皆さんと早く知り合ってたらもっと安くていいものが頼めた」と言われました。そこで伝えることも大事だと気づいたんですよね。自分がいいと感じているものを伝えることも人助けというか、人のためになるんだなって思ったんです。

自給自足の生活に興味がある方へメッセージはありますか?

あまり最初は無理をせず、小さいくてもいいので出来ることから始めていくのがいいと思います。
例えば出来る人に聞いてみたり、既に自給自足の生活をしている人に話を聞くだけでもいいんですよね。まずは興味を持って小さなことからでもチャレンジしていって欲しいなって思います。
普段の生活のためのお金にいっぱいいっぱいにならずに、ゆっくり考えてみて、自分にとって本当に大事なことをやっていって欲しいです。

志我の里ホームページ
http://shiganosato.com/