宮城県牡鹿郡女川町にある梅丸新聞店には最先端の太陽光発電設備が導入されています。4.5kWの太陽光パネル・4kWhの蓄電池・V2Hスタンド・16kWhのEV車です。代表取締役の阿部喜英さんに、設備を導入するに至ったキッカケや背景を伺いしました。
阿部 喜英さん
有限会社梅丸新聞店
宮城県女川町出身。高校卒業後、大学進学で仙台へ。大学卒業後は仙台の広告代理店に入社し、8年の勤務期間を経て1999年に家業である女川町の梅丸新聞店に就く。
新聞販売店経営の傍ら、女川町観光協会の顧問や女川町商工会の理事などの町の要職に参画し、地元を活性化させる活動に取り組む。
目次
梅丸新聞店について
梅丸新聞店の歴史を伺ってもよろしいでしょうか?
昭和12年に祖父が創業したと聞いています。祖父は元々、隣の雄勝町のお菓子屋の息子で、女川町に来てから梅月堂というお菓子屋さんを自分で始めました。お菓子屋さんの仕事をする中で、牡鹿町へ行商に行く際にたまたま出会った新聞記者さんと意気投合したことがキッカケで、特派員を行うことになり、その流れで梅月堂の梅の字をとった梅丸新聞店が誕生したのです。
阿部さんが梅丸新聞店に入社するまでの経緯をお聞かせ下さい
元々新聞屋はやりたくなかったけど(笑)中学生の頃から、将来は家業を継ぐことになるだろうと漠然と覚悟をしていました。その代わり、家業を継ぐまでは好きな仕事をしようと決めていたので、大学卒業後は仙台の広告代理店に就職しています。内勤や営業、経理を8年間経験させて頂いた後に退社し実家に戻りました。
普段のお仕事の流れをお聞きしてもよろしいですか。
AM2:30に仙台から発送された新聞が事務所に到着します。そこからが仕事のスタートです。12名のスタッフで手分けして配達を行い、AM6:00までに事務所に戻ってきます。帰社後は翌日の折り込みチラシの準備をして、AM9:30で業務終了です。梅丸新聞店の特徴としては、配達エリアが都会のように住宅が密集している地域ではないので、配達に比較的時間がかかる点ですかね。
梅丸新聞店が大切にしていること
お仕事をされる上で大切にしていることを教えてください
お客様に継続して購読して頂くことを大切にしています。新聞販売店は営業活動を行えるテリトリーが予め新聞社によって定められています。私が任されているエリアは決して大きな商圏ではないため、お客様に継続して新聞を購読して頂くことが、事業を継続する上でとても重要だからです。
そのために独自の取り組みとして、女川地区に特化した情報を発信する『うみねこタイムズ』という情報誌を発行しております。新聞を購読される方の中には、普段インターネットにあまり触れる機会がないという方も多いです。そのような方々に向けて、インターネットには載ってるけど、新聞や町の広報誌には掲載されないような情報を掲載し、好評を得ております。
その他に意識して取り組まれていることはありますでしょうか?
女川町のまちづくりに積極的に関わるようにしています。私の町は東日本大震災によって壊滅的な被害を被りました。震災前の配達件数は約2,900軒だったのが、震災翌日は0軒です。その時の経験から、そもそも町に住む人がいないと、事業が継続できないと痛感したからです。町の人口は震災前は約10,000名だったのが、現在は約6,500名で約1,400軒配達しています。
太陽光発電について
太陽光発電に興味を持たれたキッカケを教えてください
2006年の爆弾低気圧による停電がキッカケです。その時は3日間、電気が通っていない中で業務を遂行した為、とても苦労しました。先程お話しした通り、AM2:30の真夜中から作業を行うため、照明がないと何も出来ません。
当時は車のヘッドライトで凌いだり、知り合いから発電機を借りたりと試行錯誤しました。その時の経験から、防災用のバックアップ電源に興味を持ち始めました。
大変な思いをされましたね。その後太陽光発電設備を導入されるまでどのような変遷があったのでしょうか?
停電に備えて、カセットガス発電機を自社でも購入したのですが、いつかは燃料のいらない太陽光発電を導入したいと考えるようになりました。色々調べていくうちに、太陽光発電の特性上、昼間しか発電した電気を使えないため、電気を貯めておける蓄電池もセットで導入する必要があると気が付いたのです。しかし、残念ながら本格的に検討を行った2010年当時は、イニシャルコストが高すぎたため、導入を先送りにしました。
2010年の当時から蓄電池に目をつけられていたとは、先見の明がありますね!
ありがとうございます(笑)。震災後の2014年に自宅を兼ねた新社屋を建築した時にも、太陽光発電設備を導入したかったのですが、予算の兼ね合いと設計屋さんのこだわりでまたしても導入を見送っていました。
デザイン上、屋根の上に太陽光パネルを載せたくないという話はよく聞きますね
2018年に縁あってGCストーリー西坂さんのお話を聞いた際に、駐車場に太陽光パネルを設置できるソーラーカーポートを知りました。インターネットでソーラーカーポートについて色々調べても信頼できる情報が見つけられなかったため、最終的にGCストーリーさんから直接お話しを聞くことに。ご提案頂いた内容と金額に納得出来たため、ソーラーカーポートと蓄電池を同時に導入しました。2019年には新聞配達用の電気自動車を購入した為、V2Hスタンドも設置しています。
蓄電池だけでなく、電気自動車とV2Hスタンドもあれば停電時も安心ですね。
はい。4kWhの蓄電池と16kWhの電気自動車があれば、万が一停電が発生しても普段と変わりなく業務を遂行できるため、当初の願いが叶いました。
エネルギー源の分散について
太陽光以外に取り入れているエネルギー源について教えて下さい
灯油、薪、カセットボンベは常に備蓄しています。灯油は給湯用と暖房用に別々に屋外用タンクを設置してます。薪は震災直後に燃料が不足する状況があったので、そういった場合にも対応出来るよう薪ストーブを導入しました。カセットボンベは非常時用に備蓄しており、有事の際にコンロや照明に利用する予定です。ガスボンベは震災時に津波で流されて爆発する音を聞いてトラウマになってしまい、利用を避けました。
すごい徹底されてますね!
震災後に1ヵ月電気のない暮らしを経験したのですが、火があれば何とかなるなと気が付いたんですよね(笑)。煮炊きが出来て、暖がとれて、灯りにもなる。その時の体験から、灯油と薪を普段の生活に取り入れたいと考えるようになりました。
太陽光発電設備の導入後に生活に変化はありましたか?
発電量・蓄電量・消費電力量が分かるモニターを設置したことで、どの時間帯にどれくらい電気を使用しているかがわかるようになりました。その結果、事務所の蛍光灯の消費電力量が多いことに気が付いたので、照明をLED型電球に交換しました。その結果、電気代が10分の1位になりました。
エネルギーの自給自足
阿部さんからみてこれから「当たり前」にしたいことは何でしょうか?
エネルギーの自給自足がより当たり前になる世の中になるといいなと思います。自然のエネルギーを上手に活用して自給自足が進むことによって、エネルギー源の輸入量の減少、発電所の減少、CO2削減など多くのメリットが生れる。その為には各家庭や各コミュニティ単位で、時間はかかってもエネルギーの自給自足が出来る仕組みが作られていくのが理想です。
お話しをお伺いしているとリスクヘッジという観点を大事にされてるように見受けられました。そのあたりはいかがでしょうか。
そうですね!どんな状況でも自分のことは自分でできる状態ができれば、心の余裕が生まれて他の人の事も助けられるようになると思うんです。エネルギーの自給自足が普及すれば人々の心に余裕が生まれてより他の人のことも考えられるようになる、そうやって皆より幸せになっていけるのではないかと思います。
有限会社梅丸新聞店ホームページ
http://www.umemaru.biz/