太陽光発電設置にあたり覚えておきたい法律「改正FIT法」と廃棄・税金の基礎知識
近年、土地や住宅の屋根に多く設置されている太陽光発電システム。「自宅への太陽光発電の設置を検討しているが、費用がどのぐらいかかるのか分からない」、「太陽光発電の設備には固定資産税が発生すると耳にした」という方も多いのではないでしょうか。
たしかに太陽光発電にはメリットだけでなく、デメリットも存在します。今回は、太陽光発電システムの基礎的な知識や導入における税金など注意点を解説します。太陽光発電について理解を深め、失敗することのない導入を目指しましょう。
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目次
太陽光発電システムを設置するには?改正FIT法と補助金、工事の手続きについて
太陽光発電をお得かつスムーズに導入するために、補助金の申請や必要な手続き、知っておきたい法律についてまとめました。
太陽光発電固定価格買取制度(改正FIT法)とは?
太陽光発電固定価格買取制度(改正FIT法)とは、再生可能エネルギー(再エネ)で発電した電気を、一定期間、国が決めた価格で買い取るよう、電力会社に義務づけた制度を指します。太陽光発電のようなエネルギーを対象にした「固定価格買取制度」のことで、平成24年7月から開始し、平成28年6月3日には改正FIT法が施行されました。
再生エネルギーは発電設備の建設や維持するコストが高く、なかなか普及が進まないため、こうした制度で買い取りを促進し、再生エネルギーをより広い普及を目指すことがFIT法の趣旨でした。
しかし、電力会社による買い取りの費用を国民が毎月請求される電気料金の一部として負担しています(再生エネルギー発電促進賦課金)。その国民負担が大きくなることと、自然エネルギーのなかでも太陽光発電ばかりが普及し偏りが大きくなってきたことが加味され、より効率的な再生エネルギー電力の取引・流通を実現するため、当初のFIT法を見直したのが改正FIT法です。
改正FIT法では、太陽光以外にも、風力・水力・地熱・バイオマスのいずれかを使って作られた電力が対象になります。
個人の場合も、何らかの形で再生可能エネルギー発電をすれば、作った電気を電力会社に買い取ってもらえます。ただし、現実的に個人宅で取り入れやすい再生可能エネルギー設備というと、太陽光発電パネル(ソーラーパネル)が思い浮かびますね。住宅の屋根にあるような太陽光発電システムは作られる電力は概ね10kW未満であり、自分で消費した分を差し引いた余剰分の電力が買い取り対象となります。
なお、買い取り期間は10kW以上が20年、10kW未満は10年と定められています。家庭用発電設備の場合10kWがほとんどなので、10年があてはまります。
太陽光発電の補助金は自治体のみ。補助金を受けるための条件について
太陽光発電設備の設置で受けられる国の補助金制度は、2013年で終了しています。
現在は自治体を中心に公的な補助が行われていますが、予算の関係で年度ごとに申請できる金額や期限、件数が決まっている場合がほとんどです。まずはお住まいの地域でこのような補助政策が行われているかどうかを確認してみましょう。
一例として平成30年度の東京都品川区の補助金制度についてみていきます。
品川区では、地球温暖化対策推進と環境保全意識啓発を図ることを目的として「太陽光発電システム設置助成事業(家庭用)」を実施。家庭用では30件、事業用では5件について、費用の一部を助成すると決定しています。
区民が区内の自宅に新品の太陽光発電システムを設置することが基本的な条件です。そのほかにも細かい条件が設けられています。東京都品川区以外にも荒川区、千葉県市川市、愛媛県松山市など、各地で援助制度が導入されています。
補助金を得るための申請のタイミング
各行政から太陽光発電設備の補助金を得るためには、工事を始める前に申請する必要があります。
一般的には下記のような流れです。
- 契約
- 補助金申請
- 交付決定
- 着工
- 完成
- 補助金の受給
太陽光発電の工事前に電力会社と資源エネルギー庁への申請手続きを
太陽光を設置して発電、電気の販売を行う方は、「発電事業者」となり、国から設備事業計画認定を受ける必要と、電力会社と契約を結ぶ必要があります。通常は国への申請と電力会社への申請、設置の準備を並行して行います。
- 電力会社と「特定契約・接続契約」を行う
電力会社の送電線(電力系統)と接続して、電力を売電するための契約を結びます。 - 事業計画策定ガイドラインを踏まえて、事業計画を立て、経済産業省(資源エネルギー庁)へ提出
電力会社の接続の同意が取れていること、設備メンテナンスの実施や事業の適切な運営確保の方法を明文化し、電力会社資源エネルギー庁に提出します。
※ガイドラインは、以下の資源エネルギー庁のHPにPDFが掲載されています。
https://www.enecho.meti.go.jp/category/saving_and_new/saiene/kaitori/dl/fit_2017/legal/guideline_sun.pdf
上記が完了し、経産省から事業計画の認定を受けたら設置工事を開始。完成後試運転経て、晴れて電力供給開始となります。
電力会社との特定契約や接続契約解除、資源エネルギー庁への事業計画書提出と言われても、「素人には難しそう」というのが本音でしょう。とくに電力会社への申請~受理までは時間がかかってしまうことも多いです。それらの書類作成や申請代行に慣れた施工会社に注文すると申請がスムーズです。太陽光の見積もりを取る際に、申請代行についても相談してみることをおすすめします。
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太陽光発電システム廃棄時の廃棄物やかかる費用の基本知識
2012年頃から広く使われるようになった太陽光発電システム。10年後や20年後に処分しないといけなくなったときにはどうしたらいいのでしょうか。ここでは、費用や処理方法を確認していきます。
廃棄にいくらかかる?事業用ソーラーシステムの撤去・運搬・廃棄費用について
太陽光発電の廃棄にかかる費用は大きく分けて3つ。
太陽光のパネルを撤去するための「撤去費」、運び出すための「運搬費」、適切に処分するための「処分費」です。自然エネルギーを利用することもエコですが、撤去された製品も正しく分解・リサイクルされます。
資源エネルギー庁のデータによると、10kw以上の事業向け製品の廃棄等にかかる費用は2018年度の場合1Kwあたり1.19万円、2Mkwでは2,385万円と想定しています。
※FIT法では廃棄費用として調達価格に資本費の5%を計上しています(10kW以上太陽光発電設備)
しかし、この3つの費用を賄うために事業者の内部だけでなく、外部にも積み立てておく必要があると考えました。2018年3月まではこうした積み立ては努力義務でしたが、翌4月からは義務化され、太陽光事業者や電力会社等が積み立てを行っています。
今後、FIT法によって安定した電気の買取が行われる期間が終了すると
- 「太陽光発電装置の売上が減少し、正しい廃棄物処理をしないで業者が倒産」
- 「自然エネルギーシフト自体が衰退しかねない・・・」
などの危機感から、処分費用をきちんと確保するために、外部積み立てが義務化されたというわけです。こういった安定的で責任ある処分方法を確立することで、買い替え需要を促し、事業者にとっても消費者にとっても安定して自然エネルギーを利用し続けることができます。
家庭向けの太陽光発電の廃棄物と対処法
最新の太陽光発電設備は、およそ20年以上は使用できるとされています。
しかし、住宅の解体や建て替え、震災による落下、水害によって使用できなくなり、20年よりも短い期間で廃棄せざるを得なくなる可能性も考えておかなければなりません。
太陽光発電設備は施工業者に撤去してもらう
太陽光発電設備を廃棄する場合、撤去のために施工業者に取り外しから運び出し、処分までを依頼することになります。その際、撤去費用とパネルや装置の処分費用がかかります。
災害による理由で太陽光発電設備が廃棄になった場合
太陽光発電設備やパネルは、電気設備の一部であるため、通常は施工業者が取り外します。
しかし、災害等でパネルが落下したときは市区町村の地域のルールに従って自身で廃棄しなければならないこともあるようです。このような特殊な廃棄物の処理方法については、お住まいの市区町村の窓口でご確認ください。
家庭向けの太陽光発電の廃棄にかかる費用は25万円程度
太陽光発電装置を処分する際は、最も大きなソーラーパネルからパネルを固定する架台などの金属類、小さいものでは接続機器やその他の電気機器類まで取り外し、それぞれを適切な方法で処分します。
出力10kw程度の家庭向け太陽光発電設備なら、太陽光パネルは1枚あたり1,200円から数千円程度で引き取ってもらえることが多いようです。
また、取り外しのための作業代はほとんどが人件費です。大きなものほど人手と時間がかかるため、運び出しのための費用や運搬費まで含めて、20万円程度はかかるものと考えておきましょう。さらに高いところに設置してあり、足場が必要なときは数万円の追加費用がかかります。
家庭用の太陽光発電設備を廃棄する際には、20万円から25万円程度の費用がかかるものと想定しておくとよいでしょう。
確定申告と固定資産税は?太陽光発電に関する税金について
減価償却、確定申告、事業税・・・太陽光発電で得られた利益にかかる税金や費用、わかりにくいですよね。ここではその計算方法について、例を挙げながら検討していきます。
太陽光発電で得た収入の確定申告は必要?収入が20万円を超えたら要注意
太陽光発電で得た収入の金額によっては確定申告が必要です。基本的に発電容量が10kW未満であれば住宅用として計算され、売電収入から必要経費を引いた額が20万円以上であれば、「雑所得」として確定申告を行います。
反対に、発電容量が10kW以上の場合は産業用として区分されます。
仮に個人事業主の場合、収入が38万円を超えたときから確定申告しなければなりません。38万円を超えなければ、基礎控除で相殺されることになります。発電容量が50kW以上の設備や施設だと、事業所得として認められるようです。
会社員が太陽光発電で収入を得た場合
もう少し具体的に、サラリーマンが太陽光発電で収入を得た場合についてみていきましょう。最初に、必要経費として認められるものを押さえておきます。
<必要経費として認められるもの>
- 減価償却費(システム価格×定額法による減価償却率0.059)
- ローン利息
- 固定資産税
- 土地の賃料
- 遠隔監視システムや通信などにかかる管理費
- 太陽光発電設備に対する損害保険料
- メンテナンス費用
- パワーコンディショナーの運電費用(電気代)、など
<計算例>
年間発電量が15,000kW、売電量が13,000kW、売電収入が63万円、必要経費が800万円であったときの計算です。
- 売電収入から必要経費を引く
設備価格×減価償却率(定額法で0.059)×売電収入割合(売電量÷年間発電量)
売電収入:15,000kWh×42円=63万円
売電収入割合:13,000÷15,000=0.866
必要経費:800万円×0.059×0.866=40万8,752円
売電収入63万円-40万8,752円=19万1,248円 - 経費を引いた金額が20万を下回る場合=確定申告の対象外
- 経費を引いた金額が20万を超えた場合=確定申告の対象
したがって、この例だと雑所得として確定申告の必要はありません。なお、収入があったにもかかわらず確定申告をしなかった場合、延滞税を合わせて納税しなくてはいけません。忘れずに申告しましょう。
太陽光発電設備の固定資産税はいくら?減価償却率で毎年税金が変わる
太陽光発電設備は、住宅用と事業用で固定資産税が変わります。その判断を分ける基準が出力です。
出力10kW超なら電気の売買目的とみなされ、事業用として固定資産税がかかります。一方、出力10kW未満かつ設備の取り外し可能なタイプでは、個人利用を目的としたものと判断され、固定資産税の対象にならないことが多いです。
個人住宅でも事業用とみなされるケースもある
例えば、屋根や庭、空き地に10kW超のものを設置すると事業用とみなされます。また、自己所有の賃貸住宅の屋根に設置した場合も不動産賃貸業の一部とみなされ課税対象となります。
固定資産税の計算方法
太陽光発電の設備は減価償却の対象となるため、固定資産税を決定する場合も耐用年数を17年として計算されます。減価償却率は1年目が最も高く、年ごとに償却が大きくなり、最後は0となって税務上の資産価値も無くなります。
また、設備取得後3年間は、固定資産税額が2/3に減免される課税標準の特例があります。住宅ローンの返済と組み合わせて計算することも少なくないようです。
固定資産税の計算例
<1年目>
初年度の減価率0.064
購入額1,000,000円×(1-0.064)=課税評価額936,000円
936,000円×税率1.4%×2/3=8,779円
1年目の固定資産税額=8,779円
<2年目>
2年目以降の減価率0.127
前年度課税評価額936,000円×(1-0.127)=課税評価額817,128円
817,128円×税率1.4%×2/3=7,619円
2年目の固定資産税額=7,619円
まとめ
今回は、太陽光発電システムに関する内容についてまとめました。毎年発生する固定資産税や費用、注意点など太陽光発電のシステムにはかかせない情報ばかりです。
- 自然エネルギー政策を進めるため、太陽光発電の余剰電力を一定価格で買い取るルールに「改正FIT法」がある
- 太陽光発電の設備にまつわる補助金の条件や金額は自治体ことに異なるので、問い合わせが必要。導入を希望するなら、工事の前に各種申請を済ませることで、スムーズに補助金を受け取れる
- 太陽光発電の設備を撤去する費用は家庭用で約25万円程度。災害など耐用年数以下で撤去することもあるので費用に余裕をもって設置するとよい
- 電気を売ったお金が20万を超えたら税務が発生することがあるので要注意。経費を引いた額に応じて確定申告が必要
- 事業所得の場合、経費を差し引き、38万を超えたら確定申告が必要
自宅に太陽光発電を設置予定の方は上記情報をしっかりおさえておきましょう。
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